本書は、「物品」と並行して総合編の第2章「室と場面」を補完する拡張編の一つである。本書は、旧版の設計資料集成3集「単位空間I」の建築人間工学に基礎をおいているが、改訂にあたっては次の三点を考慮して編集された。一つには、既存の「人間工学」という分野にとらわれずに、人間の社会的・文化的側面も含めて、広く人間と環境との相互依存的な関係を理解するためのデータ集として構成した。二つ目には、人間の基本原理だけでなく、関連する設計原理および事例も取り扱うように心がけた。三つ目には、歴史、時間的ファクター、文化的視点などからの横断的な解説や、定番的な概念や理論、設計への応用例(成功例・失敗例・事故例)についてもコラムとして取り扱うこととした。本書は5章からなる。第1章「人間と環境」では、環境を構成する一要素である人間の姿を総量的に俯瞰している。第2章「形態・動作」では、人体の形態および運動機構の特性について詳述している。第3章「生理」では、人間の感覚および作業の能力とその限界について詳述している。第4章「環境・行動」では、環境の認知特性や行動特性について、相互に交流する人間集団という側面も含めて詳述している。
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